予防獣医学の発展により、人間と同様に動物も高齢化が進み、現在では悪性腫瘍(がん)が非常に増えています。
きし動物病院では腫瘍科(がんの診断・治療)に力を入れており、早期発見・早期治療に努めています。
悪性腫瘍(がん)は人間だけでなく動物もなる病気です。
体の中や表面の細胞が異常に増殖してできるのが腫瘍です。
腫瘍には良性と悪性があります。
悪性腫瘍は増殖スピードが早く、周りの正常な組織にもひろがり、体のあちこちに転移していきます。
良性腫瘍は増殖スピードが悪性に比べて遅く、転移もしませんが、大きくなった時には手術が必要な場合もあります。
がんの種類によって出てくる症状は様々ですが、一番気を付けてほしいのが、体重の減少です。
普段の体重から急に10%以上減少すること(体重4kgなら400g以上)が続いたときは、病院での検査をおすすめします。
他にもこのような症状が考えられます。
もちろんこれらの症状が出ても、悪性腫瘍(がん)とは限りません。
しかし何かしらの病気が隠れていることが多いです。
普段から体を触ってしこりがないか確認したり、様子をよく見ていると症状に気づきやすいです。
気を付けて見てあげましょう。
動物のがんも人間と同じで早期発見・早期治療がとても大事です。
目立つ症状が出ていない初期にがんを発見できれば、治癒率が格段に上がります。
そのため、定期的に健診を受けて早期に発見し、治療につなげることが重要です。
腫瘍の診断は多くの検査をします。治療をするにあたって、がんの種類や進行度、全身状態を十分に把握することが重要です。そのため多くの検査とそれにかかる時間は必要なものなのです。
しこりなどの症状や飼い主さんがいつ気づいたか、病歴や過去の治療歴などについて詳しくお話を伺います。
しこりなどの病変部のを実際に触って視て、診察します。
周りの組織への浸潤やリンパ節に異常が認められる場合には悪性腫瘍が疑われます(触ってしこりが周りにへばりついている場合が多いです)。
病変部の細胞の一部を採り、顕微鏡で観察します。
院内で良性悪性の判定、腫瘍の種類がわかることもありますが、あくまで悪性の可能性があるかどうかを調べるスクリーニング検査です。
悪性が疑われたり診断がつかない場合には、病理組織検査に進みます。
細胞診より広範囲の組織を採って行う、精度の高い検査です。
病理診断がつくと腫瘍の特徴を知ることができ、今後の治療方針を決める上で非常に重要です。診断、治療予後の要となる検査です。
検査画像から、腫瘍の構造や周囲組織への影響、他の臓器への転移の有無などを診断します。
レントゲン、超音波(エコー)検査を組み合わせることで、早期発見を目的とした検診にもなります。
ゴールデンレトリバーなど腫瘍疾患の発症率が高い犬種の場合、お腹の中にしこりができることが多いため、普段の生活でしこりを発見することは難しいです。
8歳を超えたら年一回のレントゲン、超音波検査をお勧めします。
腫瘍に対する治療法には、外科療法、放射線療法、化学療法、4.免疫療法などがあります。
それぞれの治療法にメリット・デメリットがあり、腫瘍の種類によって効果のある治療法が異なってきます。腫瘍の種類や進行度に応じて様々な治療法を提案します。
主にこの3つの治療が腫瘍治療の3本柱になります。
手術によって腫瘍を摘出する方法になります。腫瘍の根治を目指すために第一に考慮する治療法です。根治ができなくても症状を緩和し、苦痛を軽減できることもあります。
高エネルギーX線治療装置を用いて治療する方法です。 外科療法に次いで効果的な悪性腫瘍の治療法です。
など、放射線療法が適切と判断した場合は、放射線治療装置の設備のある高度医療施設にご紹介いたします。
抗がん剤を使用し、治療する方法です。
最近ではより効果的な動物用の抗がん剤も出ています。
従来の抗がん剤はがん細胞だけでなく正常な細胞にも攻撃的に作用してしまうので副作用が起こりやすいというデメリットがありました。
分子標的薬はがん細胞を狙って攻撃するので副作用が出にくいです(副作用が完全に出ないわけではありません)。
経口薬なのでお家でも使えます。
悪性腫瘍の治療は状態の変化により、治療方法の変更もありえます。
その時々の状況にあわせて飼い主さんと相談しながらの選択になります。
動物の病気を発見して完治させるには、飼い主さんの協力が不可欠です。
いつも一緒にいる飼い主さんが「何かおかしいな?」と思う時には、がんに限らず病気が隠れていることが多いです。
普段からよく様子を観察し、変化に気付けるように注意してみてください。
どのような病気も同じですが、飼い主さんの協力なしに治療の成功はありません。
些細なことでも構いませんので相談して下さい。
お互いに協力して病気を治していきましょう。