病気と手術について

  避妊手術(メス)について

メスの場合は、子宮・卵巣を摘出する手術を行います。開腹手術になりますので

2日間の入院となります。

 ◎メリット

犬は初回発情前に手術することによって乳腺腫瘍の発症率が95.5%抑えられます。

また、初回発情が来てしまっても2回目の発情前であれば、92%抑える事ができます。

2回目の発情で確率は落ちますが74%抑える事ができます。それ以降はほぼ予防効果は

ありません。

猫では6カ月前に避妊手術をすることにより乳腺腫瘍の発症率が91%抑えられます。

7〜12カ月で86%抑えられ、13〜24カ月で11%と極端に落ちます。

猫においては、1歳以内に避妊手術をすると、将来乳腺腫瘍になるリスクが 低くなります。

子宮蓄膿(ちくのう)症の発症も防げます。避妊手術によって、犬では発情時の出血や、

オスにまとわりつかれることもなくなり、日常生活のストレス軽減にも役立ちます。

 ●デメリット

卵巣、子宮を摘出することは麻酔下で行います。100%安全な麻酔は残念ながら

ありません。

当院では麻酔前に必ず1度来院して頂き、手術の説明、診察、麻酔のリスクを最小限に

するためにも、基本的に麻酔例にはすべて術前検査を行なっています。

年齢、状態、犬種など様々な要因により検査内容は変わります。ご不明な点がありましたら、

質問して下さい。

また手術により本来のホルモン分泌がなくなりますので、毛質が変わる、尿漏れなどの症状が

起こるかもしれません。太りやすくなることもありますが、これはしっかりした健康管理で

防ぐことができます。

 乳腺腫瘍とは

犬の乳腺腫瘍はメスの腫瘍としては最も多く(52%)、良性が50%、悪性が50%であり、

約50%は多発性であるといわれています。ホルモン依存性腫瘍であり、早期に避妊手術する

ことで予防する事ができる腫瘍です。治療は主に外科手術になり、悪性腫瘍で脈管内に

腫瘍細胞が浸潤していた場合、切除辺縁に腫瘍細胞が存在していた場合、悪性度が高い場合

などは、化学療法を併用することがあります。

猫の乳腺腫瘍は犬と異なり、悪性が約90%であり、遠隔転移をしやすい腫瘍であると

いわれています。猫の乳腺腫瘍はほとんどが悪性であるため、治療は原則、片側乳腺摘出術

(片側の第1〜4乳腺を全て摘出する手術)になります。ただし、年齢・全身状態などを

考慮して、違う術式をご提案することもあります。

前述の様に早期に避妊手術をすることによって乳腺腫瘍をある程度予防することができます。

私自身、日常診療の中ですごく多い腫瘍だという認識があります。しかし、ある学会で

「アメリカではほとんどの犬や猫は早期に避妊手術をしているため、乳腺腫瘍はなくなり

つつある」と聞き、大変驚きました。

 子宮蓄膿(ちくのう)症とは

子宮蓄膿症というのは、子宮に膿がたまってしまう病気です。

犬の場合発情後、1〜2ヵ月で偽妊娠(想像妊娠)が起こりやすく、この時バイ菌が子宮内に

入り込むと、中で増殖し膿がたまってしまうのです。(偽妊娠は犬の生理的な現象で起きて

しまうことで、人間で言うところの想像妊娠とは異なります。)ですから発情後1〜2ヵ月で

陰部を異常に気にして舐める、オリモノが出てくる、オリモノがなくても、食欲元気がない

という症状がある場合にはこの病気を疑ったほうがいいでしょう。

 去勢手術(オス)について

睾丸(精巣)を摘出する手術です。吸収される縫合糸で、皮膚内に埋る縫合(皮内縫合)を

行いますので、抜糸の必要がありません。入院の必要もありませんので、手術当日に自宅へ

帰れます。

 ◎メリット

肛門周囲の腫瘍、前立腺の病気、精巣の病気など(特に犬に多い)になる確率が、去勢手術に

よってかなり低くなります。これらの病気になってしまってからであっても、去勢手術をする

ことで、進行を遅らせたり治療したりすることは可能ですが、状態次第では危険な場合も

あります。

去勢手術によって、攻撃的だったり、あまりにも活発すぎたりする性格を落ち着かせることが

できます。また、メスにまとわりついたり、発情期に興奮したりするのを抑えられます。

小さい頃に去勢手術をすることで、マーキングさせなくすることができる可能性があります。

 ●デメリット

避妊手術同様に麻酔のリスクが問題となります。前述のようにリスクを下げる意味でも

術前検査が大切です。また術後おとなしくなって、運動不足で太ることがありますので、

しっかりした食餌管理が必要です。毛質が変わることもあります。

  肛門周囲の腫瘍とは

肛門周囲にできる良性腫瘍が肛門周囲腺腫、まれに悪性で肛門周囲腺癌もあります。

肛門周囲以外でも尾や腰、顔など皮膚にできることもあります。場所により、座ると地面に

こすれてしまうため、出血、化膿を起こしやすく、手入れも大変です。手術で摘出可能ですが

これらの腫瘍が見られた時は去勢手術も考慮に入れる必要があります。

 前立腺の病気とは

前立腺とは膀胱の近くで尿道を包むように存在しているオス特有の副生殖腺です。これが年を

取ると少しずつ大きくなっていくのですが、あまりに大きくなりすぎると尿や便が出づらく

なり、ペニスの先から膿のようなものが出たりします。感染が伴う場合や腫瘍化した場合は、

かなり厄介な病気です。

身体検査時に前立腺の肥大が疑われる場合、エコー検査所見、他の検査と合わせ、去勢手術も

考慮に入れると治療として有効な手段となります。

  精巣の病気とは

1歳をすぎても陰嚢に精巣がない場合(潜在精巣)は特に、将来腫瘍化する可能性が高いため

去勢手術が有効です。腫瘍化する場合、ホルモンを産生し、貧血を誘発する場合があります。

この時手術しても残念ながらホルモンの影響は1〜2か月残ります。この間は対症療法で

貧血に対処するしかありません。

悪性度が高いわけではありませんが、約15%は悪性化するといわれています。潜在精巣の

場合、腫瘍化してから対処するのではなく、早期の去勢手術を強くお勧めします。

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